義実家のお義母さんの骨折騒ぎが落ち着いたころ「なんとなく胃が痛い」と訴えていたお義父さんの方が病院に行った結果”すい臓がん”だと判明しました。すい臓がんによくあるパターン、見つかったころにはステージ4。同時に余命宣告。その前日まで家族の意識は全部お義母さんに向いていたのが急展開です。
とはいえ、当の本人は見たところ元気で、なんなら家の家事ができる人はお義父さんだけだったものだからお義母さんの代わりを随分頑張ってくれていました。癌が見つかったと言っても急いで介護ベッドにして寝ておくとかではないし、本人が<在宅緩和ケア>を選んだので病院に通院する用事もないし、痛みが出たら訪問診療の医師に診てもらいながら薬で緩和しあとは静かに日常を過ごすのみですから入院・手術もありません。自分がそうだったらどう過ごすだろう?何を思うだろう?いろいろ考えさせられます。普通に日々は過ぎていくけれど体の中にいつも”痛み”があって「ここにいるぞ~」と癌に主張されるなんて…何か夢中になるものとか気がまぎれる趣味がないと辛いなぁと思います。
前回の話はこちら。
突然見つかる癌と突然考える”残りの人生”
<やり残したこと>という難問
深刻な病気が見つかるとそれが治りそうかそうでないかはさておいて、たいていの人は<残りの人生>っていうワードが一瞬よぎるのではないでしょうか。きれいに病巣を取り除けたとしても何回かはドキドキしながら定期健診に向かうんですものね。1年、1年を大事に過ごそうと思わざるを得ません。私の周りの友人・知人にもそんな方がちらほらと。そして我が家のお義父さんの”やりたいこと”は「家族を集めて温泉旅行に行く」だというのですが温泉マニアだったとかそういうのではなく、たぶんそれくらいしか思いつかないんだろうなという印象です。当日の様子は後半に…。
実はこの知らせを聞いて私はすぐにテレビの過去の放送分で「がん患者の願いを叶える」みたいな動画を何本か見たんですけど、特定の”見たい景色・会いたい人がいる”っていうのはいいなぁって思いました。達成感がある!本人にもサポートする側にも。良い雰囲気で一致団結するなぁと思って見ました。多分私の親も義実家の親もそういうのはなさそうなのでこういう特定の目標を持てる人は少ないのかもしれません。もし協力できる家族・親族がいなくてもそういうのをサポートしてくれる団体もいくつかはあるみたいですね。
自分ならどうするだろう?ー考えてみたのですが体調が悪ければ遠出の旅行は好きだけどもうしないかなぁ。人と会うのもNG。一人でひっそりしているのが一番ストレスがなくて好きなのでそれもしない。きっと人に会うと無理に”元気”を装うことになると思います。闘病中の気分を紛らわせるためにもあとに残る旦那さんのことを考えて計画を立てて家の中のものを整理整頓して、寂しくなった時用のサプライズを仕掛けておくのに時間を費やすのがいいです。家じゅうに手紙を隠しておくとか、誰かに協力してもらって解ける謎解きにしておくとか。うん、私の残された人生はクリエイティブなものにしたいです。
趣味がなかった高齢の親たち
日常的にできる趣味があったわけではない義両親。仕事を引退してから時間はたっぷりあったわりに特に何か新しいことに挑戦したり手を付けたりもしてなくて、お義父さんは海外旅行は1度も経験がなく国内旅行も車で行ける本州どまり。昔いたペットが随分前に亡くなってから年齢的にあと1世代くらいは飼えたかもしれないけどそれも手を出さず。刺激の少ない暮らしをリタイア後20年以上送ってきておりますので子供からしても「きっと喜ぶから○○に連れて行ってあげよう!」とか全然思いつかないのです。
ということで本人の要望ならばと親族で近場の温泉に行きました。子供が全員揃う1泊旅行は病気発覚後初。それ以外の泊りのお出かけは私が知る限り3,4回行ってるようなのですが同行して分かったことは、本人が旅館の料理で食べられるものももう少ないし会話も十分やり取りできてないし(母は聴力、父は話下手)なんだかんだやっぱり疲れている様子。これが本当に”やりたいこと”なんだろうか?実の娘なら突っ込んで聞くんですけどね。「本当にやりたいこと、行きたいところがあったり、会いたい人がいるけど(気を遣って)隠してるんじゃないの?それか、本当は毎週末、子供たちのうちの誰かが順番に来てくれたら遠出しなくても満足とかじゃないの?」って。外出しちゃうとそれぞれが外出先を楽しんだら結局”ただ集まっただけ”になっちゃうんですよ。そこまで仲良しではない口下手な親子関係。いつ行ってもどこかぎくしゃくしている家なので嫁としては「こんな感じで最後までいくんだろうか?なんか寂しい」って思いながら付き合っています。無理に頑張って司会者みたいに上手に話を振ってみてもいいけど疲れるからしません。スイッチOFFです。義両親にしてみればそんな空気でも全然良くって年に一回お雛様を出してきて飾ってるみたいな気分なのかな?「これが自分の子供たち・孫たちだ!」って眺めているだけで十分、みたいな?
結局私は当日いろいろ気になるけど黙ってたんです。…お義父さんこれで良かったのかな?ここからは誰のための温泉旅行かよくわからなかった日の話。